コードノート

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ブロックチェーンゲーム「My Crypto Heros(マイクリ)」を1ヶ月ぐらいプレイしての雑感と良い点・悪い点

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仮想通貨、イーサリアムの中では「Dappsゲーム」というカテゴリがあります。

基本、昔懐かしのブラウザゲーなのですが、そのインフラが仮想通貨のネットワーク上に乗っかっているものです。

その中で今、一番人気なゲームが「マイクリプトヒーローズ(通称:マイクリ)」です。DAU(1日のアクティブユーザー数)が5000人を超え、当然ソーシャルゲーム比べればまだまだだけど、中々規模感出てきたねという数字になってきました。

ソーシャルゲーム会社gumiの国光さんも最近こんなツイートをされていましたね。

ゲームとして割と良く出来ているので、僕もぽちぽちやっていて、前回のゲーム内イベントでは150位ぐらいの中堅?です。

業界関係者ではないですし、Dappsゲーがこれからくるぞ!みたいな発言はしないですが、一ゲーマーとして、改めて「ゲーム」について考える機会だったので、技術的な話よりは、ゲーム的目線でつらつらっと良い面・悪い面を書いていきます。

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時間を資産にできる

マイクリが正月にテレビCMを打った時にプッシュしたポイントがここでした。

Dappsゲームでは、キャラクターのデータを自分の資産として保有でき、それを売買できます。なので、ゲームに飽きたらキャラをお金にできるよ!って話です。

Good

YouTuberやe-Sportsプレイヤーといった特定の立場で無くとも、ゲームで生活できるようになるかも!

Bad

既存のゲームでもRMT(リアルマネートレード)という形で、ゲームのキャラクターが売れるタイトルはあった。今でもグレーゾーンだけど、ソーシャルゲームのアカウントをヤフオクで売っている、なんて状態は存在する。

それこそMMOゲームでは2000年以前に誕生したウルティマオンラインのころから、RMTはあった。

その換金性から、BOTと呼ばれる自動プログラムを回すプレイヤーが生まれたり、課金でいきなり最強になるプレイヤーが生まれることで難易度のインフレ化が進み、ゲームバランスが崩れ、自然にRMTは禁止になっていった。

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不正対策はしやすい、かも

Good

ゲームキャラ・アイテムの資産性が上がると、不正が起きやすくなるのは確かで、初期ソーシャルゲーム時代もGREEの「探検ドリランド」などでトレード機能の増殖バグを悪用し、お金を稼ぐ人がいた。

ただイーサリアム上でキャラが管理されるDappsゲーでは、こういったトレード上の不正を行うのは基本的に無理だと思われる。

いま多くのソーシャルゲームはトレード機能を備えていないのは、詐欺やRMTへの懸念ももちろん、バグなくトレード機能を作る困難さが大きく影響していそう。その機能がコスト少なく作れるのは良い。

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開発会社に手数料少なくお金が入る

Good

iOSやAndroidのゲームでは課金時にショバ代が30%持っていかれる中、イーサリアム決済でクレジットカード決済の手数料よりも安く開発会社にお金が送れるのは良い。

最近人気ゲーム「Fortnite」も配信する、ゲームプラットフォーム「Epic Games」が手数料を12%に改定することがニュースになったけれど、仮想通貨関係なく手数料を考え直す流れは続きそう。

japanese.engadget.com

最近、ソーシャルゲーム会社もHTML5ベースのゲームを作っているが、これは同様の問題意識だと思われる。可愛い水着キャラをガンガン出したいだけかもしれないけれど。

enza.fun

Bad

手数料の少ないゲームプラットフォームを使ったり、クレジットカード決済で良くない?って話になるケースは多そう。

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ユーザーが慣れる・UIが進化する

Good

仮想通貨関係なく「このゲーム面白いよ!」と評判が広がれば、自然と仮想通貨を使うきっかけになる。合わせて一般ユーザーが使いやすいよう、決済画面の使いやすさを向上させる良いきっかけになる。

今年の頭にNHKで放送された「平成ネット史」で、i-modeはエンタメコンテンツによって普及した、という話が出たけれど、それに近い部分はありそう。

時間をかけてプレイしたキャラやアイテムを売る、というのもある種のマイニング体験。

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ゲームタイトルのサービス終了時、キャラを保持できる

Good

ここ数年たびたび話題に上がることだけど、ソーシャルゲームのサービスが終了したら、強制的にキャラが失われることになる。

そのキャラデータをイーサリアム上に保持していれば、他のゲームタイトルにキャラをコンバートする、なんてことが出来るのかもしれない。SAOでも別ゲームにキャラを持っていくなんて描写があったように。

Bad

これをユーザーが求めているかは謎。

現状でも、サービスが終了しないにしても、そのゲームに飽きて別のゲームに移ったら、またレベル1からゲームを始めるのは自然。

モンハンで、新しいナンバリングのタイトルにデータを引き継ぎできるといった、同一シリーズ内でのデータ引き継ぎはあるにせよ、その程度であればあえてブロックチェーンで、とはならない。

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宣伝効果

Good

運営会社からすれば、ユーザーが自分のキャラの希少価値を上げるために、他のプレイヤーを自発的に勧誘してくれるのは嬉しい。

Bad

その宣伝行為の大きな動機がお金のためになってしまうと、過度に盛って、悪い点を隠すことにも繋がる恐れがある。というかすでにそういう傾向はあり、そこは気持ち悪い。仮想通貨ブロガーといった存在と同様。

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最後に
なぜソーシャルゲームでRMTが成立しないのか

先に書いたとおり、お金でゲーム内の強さが購入できる問題点は「1.BOTやバグを利用した不正行為の横行」と「2.インフレ化によるゲームバランスの崩壊」です。

1. ソーシャルゲームの多くの不正はデジタルゆえの弊害です。現実の世界では起きないものが多いでしょう。それがブロックチェーン技術により現実と同様不正が起きづらくなったら、それは一つの進歩かもしれません。

・・・

2.ソーシャルゲームで強さをお金を買えると、ゲームバランスは崩壊します。

しかし一方で遊戯王やMTGといったカードゲームではある種のRMTが成立(カードパックを購入して、いらないけど強いカードを引いたらそれをカードショップに売って、自分のデッキにあった別の強いカードを購入するのは普通)しています。

それでもゲームバランスが保てるのは、なぜでしょうか。

それは「かけた時間」が売買可能か、にあると思います。

ーーー
カードゲーム・・
キャラは売れるが、プレイヤースキル(かけた時間)は売れない。

ソーシャルゲーム・・
キャラも売れるし、キャラのレベル(かけた時間)も売れる。
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という構造の違いです。(マイクリの否定でなく、一般論として)

ただ、じゃあプレイヤースキルを大事にしたゲームを作ろう!というのは安易でたぶん成功しません。ソーシャルゲームが日本で万人に受けた理由として、「ゲームが下手でも、時間をかければレベルが上がって勝てるようになる。」というのは大きいでしょう。

だから流行るソーシャルゲームのために、やっぱり「レベル」は必要そうです。

でも繰り返しになりますが、「レベル」という時間の概念があるゲームで、お金でそのレベル(時間)を買えるようにするのは、インフレに繋がりやすくゲームを成立させるのが中々困難に感じます。

また一方で「プレイヤースキル」を求める実力主義のゲームでは、そもそも老若男女に流行らせることが難しそうです。そんなジレンマ。

 

これぐらい各ゲーム開発会社は当然わかっているでしょうし、その辺のバランスが整ったDappsゲームが登場するとしたらそれは素晴らしいなーと思い、この界隈をウォッチしているのでした。